夏の思い出
夏が来た。
昨日,大学に行くまでの道を自転車を引きずって歩いた。
東京都は違う,照り付ける日差しと目の前に広がるお青々とした空が眩しい。
夏はなぜか過去を思い出させる。
汗をかきながら歩いた道,
くっきりとした輪郭を持った入道雲,
道端の彩り豊かな花や草。
まだ冷めぬ夜の気温,
自転車をこいだ時の風の気持ちよさ。
私は大学生時代をほとんどその街で過ごした。
三分の一くらいはそこで過ごしていただろう。
だんだん忙しくなるサークルの準備に勤しみ,夜中まで群がる仲間の中で過ごした。
アルバイトが終わってから,真夜中,恋人の家に帰るために自転車をこいだ。
夏は甘酸っぱい過去をいつまでもぶら下げている。
もう思い出してもしょうがないことを思い出させてくる。
早くこの道を卒業する日が来てほしい。
いつまでもこの道を歩いていると思い出ばかりあふれ出してきて嫌になってしまうのだ。やっと前に進んだのに,いつまでもいつまでもあの人の背中を引きずったり,叶わなかったあこがれていた先輩への気持ちでさえ,思い出してしまう。
早くこの道から卒業しよう。
そして’いつもの道’じゃなくなった時にさらに薄くなった思い出を自分の気持ちとはかけ離れたものとしてなつかしさに浸れるくらいになりたい。